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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)763号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕「一 原告は、左記特許権の権利者である。

特許番号 第二四九七六六号

発明の名称 コンクリート構築物用鉄筋の連接装置

出願 昭和三二年六月二五日

特願昭三二―一五六二五号

出願公告 昭和三三年一〇月一八日

特許出願公告昭三三―九二六六号

登録 昭和三四年二月二六日

〔判決理由〕本件特許発明の構成要件は、

(1) 連接する目的の二つの鉄筋の端面を接合するための作動ピストンを有する接合作動部を備え、

(2) その接合作動部に対し自在に着脱することができる加圧部を備え、

(3) 右加圧部の気筒(シリンダ)内のプランヂャーの運動を右接合作動部の作動ピストンに伝えるようにした、

(4) コンクリート構築物鉄筋の連接装置

であると認めることができる。

三 被告が本件物件を使用し、譲渡し、貸し渡し、譲渡もしくは貸渡しのために展示していることは、当事者間に争いがない。

しかして、右争いのない本件物件の構造からすると、

本件物件の構成は、

(1) 連接する目的の二つの鉄筋14、15の端面を接合するための作動ピストン4を有する接合作動部1、2、3、4を備え、

(2) その接合作動部に対して自在に着脱することができる加圧部21、22、23を備え、

(3) 右加圧部の気筒(シリンダ)21内のプランヂャー22の運動を右接合作動部の作動ピストンに伝えるようにした、

(4) コンクリート構築物用鉄筋の連接装置であることをその要件とするものであると認めることができる。

四 そうすると、本件物件は、本件特許発明の構成要件の全てを満たすものであり、したがつて、本件物件を使用し、譲渡し、貸し渡し、譲渡もしくは貸渡しのために展示することは、本件特許権を侵害するものであるといわなければならない。

五 被告は、本件特許発明の特許請求の範囲の「接合作動部に対し着脱することができる加圧部」との記載のうち、「着脱することができる」という文言を「着脱自在」の趣旨であると解することはできないと主張する。特許発明の技術的範囲は、その特許発明の「特許請求の範囲」の記載に基づいて定められるべきであることはもちろんであるが、その際「発明の詳細な説明」の項の記載を参酌しうべきこともいうまでもない。そうすると、本件特許発明は、特許第二一五五〇四号「鉄筋コンクリート構築物の構築法」によつて提案された鉄筋コンクリート構造物の建造にあたつての、鉄筋の端をガス圧接法により接合して鉄筋を順次延長する方法におけるオイルジヤッキに代つて、たがいに連接すべき二つの鉄筋の端面を接合するための接合作動部に対してこれを作用させる加圧部を着脱自在に構成したことにその要点が存するものと認めることができる。着脱自在とは、その表現がいささか抽象的にすぎるきらいがあるが、要は、接合作動部の多数組に対し、ただ一個または少数の加圧部を容易に順次着脱して使用することができる程度に自在に着脱することができれば足りると解すべきである。

被告は、また、本件物件の加圧部の連絡筒は、連結筒18に切込んだ鈎状の三個の係合溝19が構成されており、この鈎状の係合溝19の垂直開口部から加圧部のシリンダ21の外側部に直角方向に突設した三個の係合突起23を挿入し、加圧部を回転操作して係合溝19の鈎状部に係合突起23を係止して接合作動部と加圧部とを一体に固着結合する構造のものであり、本件特許発明におけるように加圧部に挿入するだけの、原告のいうワンタッチで固着結合するものではないし、また、係合の確実さにおいても彼此差異があるというが、本件物件の接合作動部と加圧部との結合の構造が被告のいうとおりであつても、両者とも、接合作動部に対し加圧部が先に説明した意味において、自在に着脱できるものであるということができるし、係合の確実さについても、本件物件における係合の構造が、それによつて本件特許発明と異る特段の作用効果を有するものとは認められないから、被告の右主張は理由がない。

六 そこで、被告の抗弁について判断する。

被告の主張は、要するに、原告が本件特許出願をした際、被告は実用新案出願公告昭三二―七一六二号公報に示されるような内容の考案の実施である事業をしていたことになるから、本件特許権について通常実施権を有する、というにある。しかしながら、右内容の考案の実施は、本件特許権についての先使用による通常実施権の根拠とはなりえない。すなわち、本件特許発明と右の考案とは、つぎに述べるとおり、その技術的思想を異にする別個のものであるからである。

<書証>を総合すると、右考案における接合作動部と加圧部との結合は、「金属円筒1の上部螺子部8にプランヂャー9を有するオイルポンプ10をその胴体11の螺子部12にて廻動自在に螺着し」てなされるものであつて、加圧部を接合作動部に着脱するには、加圧部を数回ないし十数回らせんの数に応じて廻動させなければならず、本件特許発明におけるように、加圧部が接合作動に対して自在に着脱することができるような構成になつていないことを認めることができ、またその目的においても、本件特許発明におけるように、多数組の接合作動部に対して一個または少数の加圧部を着脱自在に取り付けるというのではなく、オイルポンプ10を作動しやすい位置に変更し、レバーハンドル20の操作を円滑に行なうという目的効果を有するにすぎないと認めることができ、被告が先使用にかかるものとして主張する装置の構成は、本件特許発明と技術的思想を異にするものということができる。

そうすると、他の点を判断するまでもなく、被告の抗弁は、採用することができない。

七 原告の被告に対する請求は、すべてその理由があるからこれを認容する。

(荒木秀一 高林克巳 元木伸)

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